牛 鼓 句 集
−俳句堂の同人 鋭い感覚の牛鼓さんの句集です−
みどり児や 団扇ねぶりし ねんねこよ
朝顔の 朝寝の如く 萎れけり
彼岸過ぎ なほ食いたきは 西の瓜
無防備に 腹出して寝る 野良の猫干天を 貫くばかり 鼓の音
七夕の 晴れたるを見る 牛の鼻
ぼんやりの 曇天を見る 青蛙
のびをする 猫の背撫ぜる 東風が吹く
恨めしく テレビニウスを 睨む昼
ぶくぶくと 菖蒲湯入る 忙中閑言霊よ 雀となりて 其処へ行け
萌え出づる 緑啄ばむ 小鳥あり
花散らす 雨を見上げし 河川敷
花吹雪 我有るを知る 宵の闇
震る花 乙女の如く 見えにけり花と共 枝と共々 風に揺れ
美しき 花を愛でるや 母と姪
小春日を 嗅ぐ暇もなし 窓の中
名残り雪 左程気にせぬ 黒き牛
手をつなぐ 後姿が 雛に見え
悩むれど 尚楽しきは 五七五
遠き春 三寒四温で 歩み来る
桜待ち 気早に酒を 買って待ち
桃を愛で 遊ぶ子を愛で 横になり
梅の香に 途中下車する 鄙の春濡れそぼる 白梅をみる 我がある
線路わき 坂を上がりて 梅が園
紅梅の 堅き蕾に 小雪降り
風に舞う 積もらぬ雪を 見上げてい
ストーブは 問はず語りの 相手なり
早春の 冷たき泥を 傘ふたつ
若人の 強き言葉が 刺さる冬
言霊よ 我が言の葉は いずこにか
愛猫の じゃらして齧る 白き指
みっしりと 我が瞼踏む 肉の球
今はなき 乙女を想う 雪の朝
七草も 過ぎて降る雪 身を清め
初春も ただ早々と 過ぎる雲
年の暮れ 呑む事のみが 待ち遠し
友逝きて 我のみ独り 娑婆世界
なぞなぞを 孫と云い合う 風呂の中
襟すぼめ 紙魚すらもまた 愛おしき
良き言葉 口に転がす 青き飴
朝の気を 満たした肺で 目を覚まし
三号車の君を 探す我があり
白魚の如き手を当て 熱き頬
口唇の いや増す赤き 初冬かな
うなだれる 背中にオリオン 叱咤の矢
日向と猫が 欲しくなる 白き朝
群雲に 月を描くや 終列車
四角い空に 幼き日々を思う
夕焼けに 影のみ連れの 河川敷
仲間ふえて身より心の暖炉かな
空威張り 吹けば飛んでく 紙力士
男の器も買いたし 酉の市
背の寒気 腕に抱えて 床につき
日溜りに 幼き写真を 老母出す
小春日を 寄越せと仔猫 窓を掻き
幕の隙 流した墨の 空模様
寒空や 肩に染み込む 独りの身
君が為 慣れぬ手つきで 瓦斯の台
夜明け前 残り香だけが そばに在り
氷雨降る 心にもまた 暗き雲暗雲や 吹き飛ばす声 遊戯会
くれなずむ ノラやおいでと 老婆呼び
朝霧や 吸い込みむせる 煙草のど
冬来たり 小雨に煙る 高き城
野良猫や 諦め顔で 手をすぼめ
肩抱き 君へ惜しまぬ わが体温
木枯らしや 我に帰れる 小才子
みそっかす まぜてもらって かくれんぼ
銀幕に 別れの落ち葉 はらはらと
秋空の 高みに逝くか 不如帰
柿の皮 剥いて差し出す 荒れた指
もう一度 生んで欲しいと 不孝の子
八年の 歳月思う 夕間暮れ
秋風や 首をすくめる 池の亀
金曜に 戻ると芭蕉 枯葉踏み(雲月氏へ)
不出来な子 姉にせがんで 落ち葉炊き(岡氏へ)
金平糖 ヴェガと輝く 一番星(酔恋氏へ)
多忙なる 主の背中に 赤とんぼ(悠々氏へ)
百薬の長をくれろと 独り言
満月を 眺めて交わす 酒器ふたつ
蓑虫が 居らんと嘆く 昔の子
照れかくし すすきを摘んで 髪にさし
淡き夢 満願叶う 三十路そば
ラジオから カーペンターズが 秋を告げ
いちげんに ゆっくりしてけと 午前2時
歯についた 団子をせせる 一人旅
丸くなる 猫の手足に 秋を識り
通販の カタログを見て 冬支度
運動会 雨に流れて 笑う父
葡萄パン 子供の様に ねだる母
秋の日に 虫食い葉摘む 老婆の背
職探し ついと見上げる 鰯雲
星の数 頁をめくる 夜長かな
人生は さよならだけだと 猫が云う
茄子のヘタ ついたまんまで 皿に盛り