酔 恋 句 集
−俳句堂の同人 ロマンの人 酔恋さんの句集です−
たいそうな夢などなくて芋を煮る
嬰児の乳の匂いや赤とんぼ
君よりのメール待つ日の蝉時雨
少年の目元すずしく秋に入る病む母と昔話や花葵
白いシャツ真直ぐな眼差し持つ人よ
聖五月 洗濯物を空に干す
春月夜 夫の帰りを待つ窓辺
生きをれば悩み深し春深し
ポスターの射るよな眼差し紫木蓮見上げれば君の笑顔と桜花
言葉なく夫に寄り添う桜の日
昔日の母の想いや春ショール
花の時化粧水があと少し
春時雨 母に似てきたと父が言い
父と娘の春の縁側時流れ
生きて春 心の余白に君がいて
おめでとう!言葉にリボンとどけ春
ガラス器に記念日祝う春苺
喪の家や固き蕾の桜あり
早春の空くっきりと飛行雲
あどけなき童女になりし姑(はは)の春
米をとぐ骨太の手や寒明ける
草の中水仙すっくり立ち上がり
冬林檎ころころ転がり夫の手へ
月冴ゆる生あるものみな眠る夜
重き髪束ねる指の冷たさよ
布の花部屋に咲かせて外は冬
山茶花のこぼれる道や恋の道
冬銀河 骨のきしみを抱いて寝る
寒紅を濃くひいている夜明け前
庭の隅すいせん清かに咲いてをり
幼子が海色毛布にもぐり込む
聖夜劇 天使の羽をつけし頃
亡き義兄が焼きし木炭黒々と
室咲きの花の儚さ腕に抱く
髪を梳く冬の駅舎の片隅で
かじかんだ指先に赤いマニキュア
煮凝を知らぬあなたは二十一
冬の星先に逝くなと言うあなた
冬薔薇を束ねる指が父に似て
冬の客ふんわり香りの置き土産
遠い日の鎮守の森の七五三
病んだ身を毛布に沈め風を聞く
夕暮れは優しくショールが肩を抱く
針はこぶユーミン聴きつつ今朝の冬
ずーっと好き!一途さ幼い秋の暮れ
若き人眼差しおくる先は秋
君と座す蔦からまりし珈琲館
秋深し二軒長屋の異国人
秋空や何処へゆこうか風になり
秋燈下セピア色した青き春
流星や瞬きひとつのショータイム
秋うらら同行二人の遍路道
遠い日を愛しく繋ぐ数珠玉よ
ラブソング 金木犀と風にのり
突然の人恋しさに菊香る
ガラス窓をキャンバスにして月描く
初恋は秋海棠の咲きし頃
花咲かせ独りで住まう母の秋
愚図る子の手にしっかりと栗ひとつ
キーボード言葉探しの秋の宵
無花果の熟れる日待つや蒼い空
女郎花書けば色めく野の花よ
秋の日に過去形で話す君のこと
背伸びして揺れる秋桜せいくらべ
秋の宵かけ行く娘の髪飾り
月光を髪にこぼして君に逢う
トパーズ色の香り放って檸檬切る
夢のごと光あつめて秋の蝶
花カンナ二十歳で逝きし友の恋
髪下ろし色なき風の中をゆく
刈田に鷺舞い降りて蒼い空
秋田犬昼寝の鼻先トンボとぶ
星月夜男らの夢散りばめて
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