雲 月 句 集
−旅と酒を愛する自由闊達な俳句堂の同人 雲月さんの句集です−
山道くだり光るもの土蛍
覚醒むれば晴れて寂しき霧多布
団扇くるり舞つて下駄の音すずし
炎天川のうえの風に吹かれてゐる
凄まじきは子育て宙糞す
鶯鳴かないこんもり杜のなか
胃薬食らうたようなけふの月
おじぎそう堅き蕾みの花咲く頃に
山桜川桜となり風のゆくへ
枯れ枝踏んでここは未だ冬の色
プロペラ三機右から左へ
シンシン溜め息白うなりにけり
雪掻き爺婆よう笑う蒼空
行儀わるうして雪だるま寒空
青草はほんのり残し冬景色
蝙蝠ゐんで久しい夕暮
カレンダー手に手に帰る年の暮れ
胸元にゆれてロザリオ女学生
十八のまヽで君にも桜ふる 福岡にて
霧深き一ノ倉の雪と眠る
踏む足の上に足往く列車
振り向き三秒名刺手のなか句集に落つ白髪の夕べに
振りかえり振りかえる蟷螂
転がって転がって 又転がる 団子虫椎の実拾う、汗が匂わない
髪に落葉何もなれない散歩あの山駆ける風に逢う 北海道
雲湧き出でる山に入る 九州船待つ丘見上げて薄雪草 北海道
ガジュマルもたれ瞼に聴く潮騒 鹿児島
大輪の舞茸見つけ天狗舞い 夢川柳沈黙の海峡濡らす岬盆唄 青森・大間崎
海峡の雨の中飯炊いて居る 山口・下関付近しとしと小鳥と雨やどり 三重・尾鷲辺り
ほろほろ子犬も雨宿り 和歌山・龍神にて
マツボックリ鼻で転がす雨の炊事場
石川・上木キャンプ場
子天狗丘駈け廻り瘤つくり
この人も母だと桟橋手を取るさくら咲く昨夜のさくら 東京
賑やかな待合室に眠り猫 大阪
夕暮 静か静かな 海が動く 淡路島
君の声尋ねて空を見る 詠み地、各地お前さんと ひとり 月を見る 埼玉
白き薫りの渓流を歩む 青森・奥入瀬にて
逢いたいメダカが居ない海と山 山と海 綴れ織 北海道にて
鳥居たち日も暮れて早(は)よ通りゃんせ 大分・臼杵にて
空白の日記抱ける海に居る 新潟・親知らず子知らずにて栗とわたしと名月も雨の中
黄昏に小さく走るランドセル水溜まり雲隠して空を見る
逝く人に想いありてや花化粧千鳥足雲流れ星見ゆる頃 男鹿半島・磯辺にて
夢うつつ遠くの花火 愛知・松原にて